「子どもが、登園のたびに泣いて離れてくれない」 「パートナーと離れると、見捨てられる気がして落ち着かない」 「離れることへの不安が、毎日の生活にまで響いている」
そんな悩みを抱えていないでしょうか。
離れることへの不安は、子どもにも大人にも起こります。不安そのものは、異常でも困ったことでもありません。裏を返せば、大切な相手を心のよりどころにできている、愛着が育っているあらわれでもあります。ただ、不安が強すぎたり長引いたりすると、暮らしに支障が出てくることがあります。
記事では、分離不安とは何か(子どもと大人それぞれの場合)、起きる原因、よくあるサイン、そして不安を和らげる関わり方と考え方をまとめました。
はじめにお伝えしておきたいことがあります。分離不安症といった診断ができるのは医師だけです。記事は、自分や子どもの状態を整理し、必要なときに支援へつながるための手がかりとして読んでみてください。
分離不安とは|子どもと大人に共通する「離れる不安」
分離不安とは、愛着を寄せる相手と離れる場面で、強い不安や恐怖がわいてくる状態を指します。
子どもの場合|発達の自然な一部です
子どもの分離不安は、育ちのなかで多くの子が通る自然なプロセスです。人見知りが始まる1歳ごろから幼児期にかけて、たいていの子どもに見られます。養育者と自分が別々の存在だと理解し始めた証で、病気ではありません。
小児医療の解説では、こうした不安がもっとも強く出るのは生後9〜18か月ごろとされ、2歳半を過ぎるあたりで落ち着いていくと説明されています。3歳を過ぎた子でも、入園やなじみのない場所に行く場面で一時的に不安を見せるのは、自然な反応です。朝の登園しぶりや後追いは、大半の子が一度は経験するもので、自分の子だけに起きている問題ではありません。
大人の場合|見捨てられ不安として出ることも
分離不安は大人にも起こります。身近な人と離れたとたん強い不安に飲まれる、相手が今どうしているか何度も確かめたくなる、一人になることを極端に怖がる。こうした形で、いわゆる見捨てられ不安として出てくることがあります。
精神科領域の情報によると、分離不安症はかつて子ども特有のものと考えられていましたが、現在は大人の発症も認められ、DSM-5(アメリカ精神医学会の診断基準)※では不安症のグループに位置づけられています。大人になって初めて出てくるケースも報告されています。
見極めの目安は「過剰かどうか」
そもそも分離不安があるのは、ごく当たり前のことです。かえってまったくない場合のほうが気にかかることもあります。見るべきなのは、不安が「過剰かどうか」です。年齢が上がっても軽くならず、生活に支障が出ているときは注意が必要になります。
不安が過剰で、暮らしに大きな支障が出ているときには、分離不安症(分離不安障害)と診断される場合もあります。診断するのは医師です。自己判断はせず、気になるときは医療機関に相談してください。
分離不安が起きる原因
自分や子どもを責めるためではなく、仕組みを知るために読んでみてください。
子どもの場合
生後6か月から3歳ごろは、子どもが親を「自分を守ってくれる存在」として強く頼る時期です。だからこそ、離れると不安を感じやすくなります。愛着が根づいているぶん、離れることが不安につながる、という関係です。
住まいが変わる、園に通い始める、きょうだいが生まれる、毎日のリズムが変わる、といったまわりの動きが、一時的に不安を強めることもあります。
過剰な不安の背景には、子ども本人が生まれ持った気質による部分と、養育者との関わりを中心とした育ちの部分があり、そのどちらか、または両方が関わるとされています。育ちが関わる場合、親子関係が整理されると不安が和らぐこともあります。親の不安がそのまま子どもに伝わっているだけ、というケースもあると言われています。親を責めるための情報ではなく、「親自身の不安が子に伝わることがある」という理解のための視点です。
大人の場合
身近な人との死別、親の離婚、暮らしの大きな転機といった出来事が、分離不安のきっかけになったり、それを強めたりすることがあります。かつて重い別れを味わった人ほど、また失うのではという恐れが大きくなりやすいためです。
幼い頃に安心できる愛着を築きにくかった場合、「離れても大丈夫」という感覚が育ちにくく、大人になってからの人間関係に響くことがあります。親との関係に思い当たることがあるなら、アダルトチルドレン(AC)とは?カウンセリングの効果と相談先も参考になります。
「自分には価値がない」という感覚が強いと、見捨てられることへの不安も強まりやすくなります。自分を否定する気持ちが強いと感じるなら、自分が嫌い・自己肯定感が低いときの原因と克服方法も合わせて読んでみてください。
分離不安によくあるサイン
診断ではなく、状態を整理するための手がかりとして確認してみてください。
子どもに見られるサイン
- 養育者のそばを離れるのを、激しく嫌がる
- 朝、園や学校へ行きたがらない
- 夜、一人で眠るのを怖がる
- 養育者の姿が見えなくなると、取り乱してしまう
- 離れる直前に、頭やお腹の痛みを口にする
- 家族と引き離される夢にうなされる
大人に見られるサイン
- 連絡がつかないだけで、強い不安が押し寄せる
- 相手の様子を、繰り返し確かめたくなる
- ひとりで過ごす時間が、ひどく苦しい
- 特定の相手に、頼りすぎてしまう
- 置いていかれることを、いつも気にしている
体の症状として出ることも
分離不安は、心の面だけでなく体にもサインを出します。頭が痛い、お腹が痛い、吐き気、動悸など。とくに子どもは、不安をうまく言葉にできないぶん、体の不調というかたちで出やすくなります。こうした症状が離れる場面と重なっているなら、分離不安が関わっているのかもしれません。
不安を和らげる関わり方(子どもへ)
一度に全部やる必要はありません。できそうなものから、ひとつずつ試してみてください。
不安な気持ちを否定しない
「そんなことで泣かないの」ではなく、「不安だったね」と、その気持ちをそのまま受け止めてあげてください。頭ごなしに打ち消すと、不安はむしろ大きくなります。まず認めてもらえることが、安心の入り口になります。
必ず戻ることを具体的に伝える
「お昼寝のあとに、必ずお迎えに来るよ」のように、いつ戻るかを具体的に伝えてください。見通しがあると、子どもは安心しやすくなります。
お別れは短く、はっきりと
名残惜しくて別れを長引かせると、かえって不安が強まります。笑顔で「いってきます」と短く伝えて離れるほうが、気持ちの切り替えを助けます。
戻ったら、たっぷり関わる
再会できたら、まずしっかり抱きとめて気持ちを受け取ってください。「離れても、ちゃんと戻ってきてくれた」という体験の積み重ねが、安心の土台をつくります。
親自身がどっしり構える
親の不安は子どもに伝わります。「大丈夫」と親が落ち着いて送り出すことが、子どもの安心を支えます。登園しぶりの背景に不登校の兆しを感じるなら、不登校の原因と対処法、親の心構えと支援も参考になります。
不安を和らげる考え方(大人の自分へ)
不安をなくそうとしない
「不安を感じてはいけない」と思うほど、不安は強まります。「今、不安が出ているな」と、まず気づいて受け止めるところから始めてみてください。
確認行動を少しずつ減らす
何度も連絡を確認したくなったら、まず5分だけ間を空けてみる。確認しなくても平気だった、という小さな経験が、不安を和らげていきます。
一人の時間を安心できるものにする
一人でいる時間に、好きな飲み物を用意して本を読むなど、心地よい習慣をつくってみてください。「一人でも大丈夫」という感覚は、少しずつ育てていけます。
自分の価値を相手に預けない
相手がそばにいるかどうかと、あなたの価値は別ものです。その実感を取り戻していくことが、いちばん根っこの部分をほぐしていきます。
すぐには変わらないと知っておく
何年もかけて身についた感覚は、ほどけるのにも同じくらいの時間がかかります。急がず、少しずつで大丈夫です。
こんなときは専門家・医療機関へ
分離不安の多くは、成長や時が経つにつれて和らいでいきます。ただ、次のようなときは専門家を頼ってください。
子どもの場合
- 年齢を重ねても、不安が一向に軽くならない
- 登園・登校ができない状態が、長く続く
- 頭痛や腹痛といった体の不調が、何度も出る
- 日常生活や学業に支障が出ている
担任の先生やスクールカウンセラー、ふだんかかっている小児科医、児童精神科などが相談先になります。こうした状態では、認知行動療法(考え方や行動のくせに働きかける心理療法)や、家族への支援が行われるとされています。早めに相談することで、対応の方向が見えてきます。
大人の場合
- 不安のせいで、暮らしや仕事に支障が出ている
- パニック発作が、繰り返し起こる
- 相手への依存が、関係を苦しくしている
- 気分の落ち込みが、2週間以上続いている
- 眠れない、食欲がない状態が続いている
- 「消えてしまいたい」という考えが、ふとよぎる
気の弱さのせいではなく、心が限界に近づいているサインだと考えてください。心療内科や精神科などの窓口に、早めに相談してください。心と体の限界サインについては、精神的ストレスが限界を超えるサインと解消法で詳しく紹介しています。
親自身が疲れているとき
子どもの分離不安に寄り添う親のほうも、じわじわ疲れていきます。親が不安を抱えたままだと、それが子どもへ移ってしまうこともあります。だからこそ、親が自分をいたわる時間を持つことが、めぐりめぐって子どものためになります。育児の悩み全般については、育児の悩みの相談先と対処法も参考になります。
「消えてしまいたい」という考えが頭から離れないときは、迷わず次の窓口を頼ってください。
・こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556
・よりそいホットライン:0120-279-338
・厚生労働省「まもろうよ こころ」:https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/
一人で抱えず、話せる場所を持つという方法
分離不安は、一人で抱えるほど強くなることがあります。専門家と話すことで、負担が軽くなる場面があります。
大人の分離不安の奥には、「離れたら失われてしまう」という思い込みが横たわっています。カウンセリングでは、崩れにくい関わりを続けるなかで、その思い込みを少しずつ塗り替えていけます。「なぜ、離れることがこれほど怖いのか」という問いは一人では立てにくいものですが、誰かと話しながらほどいていくと、どの過去の経験が今の不安に結びついているのかが少しずつつかめてきます。
子どもの分離不安に頭を悩ませる親御さん自身の不安も、話せる場があるだけでずいぶん軽くなります。親の心がほどけることは、そのまま子どもの安心へと返っていきます。
「カウンセラー」は資格がなくても名乗れますが、公認心理師(心理職で唯一の国家資格)は国家試験に合格した人だけが名乗れます。あなたを責めたり急かしたりせず、必要なときは医療などの支援にもつなぐ視点を持っています。
離れる不安を一人で抱えないで|オンラインカウンセリング「Kimochi」
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オンラインカウンセリング「Kimochi」の特徴
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仕事や家事の合間でも予約しやすく、声を出して話すのが難しいときはチャットでの相談も可能です。
離れる不安のことは、理由をうまく言えないまま話し出しても問題ありません。言葉を探しながら、一緒に少しずつほどいていけます。
もし体調にはっきり影響が出ているときは、医療機関への相談を先に考えてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 分離不安とは、どういう状態ですか?
愛着を寄せる相手と離れる場面で、強い不安や恐怖がわいてくる状態です。子どもでは1歳ごろから幼児期にかけて多く見られ、正常な発達の一部です。大人にも起こり、パニックや相手を避ける行動、強い苦痛といった形で出ることがあります。
Q2. 子どもの登園しぶりは、問題があるのでしょうか?
多くの場合、問題ではありません。不安がもっとも強まるのは生後9〜18か月ごろで、初めての登園などで一時的に不安を見せるのは自然な反応です。ただし、年齢が上がっても軽くならず、身体症状や生活への支障が続くときは、相談を検討してください。
Q3. 分離不安の原因は何ですか?
子どもの場合は、発達の自然な段階に加え、まわりの動きや本人の気質、養育者との関わりが関係します。大人の場合は、過去の喪失体験や育ちのなかで受けた影響、自己肯定感の低さなどが関わることがあります。原因は一つではなく、いくつか重なることが多いものです。
Q4. 子どもにどう関わればいいですか?
不安な気持ちを否定せず受け止め、必ず戻ることを具体的に伝えてください。お別れは短くはっきりと行い、戻ったらたっぷり関わる。そして、親自身が落ち着いて構えることが、子どもの安心につながります。親の不安は子どもに伝わりやすいためです。
Q5. 大人の分離不安は、どう和らげればいいですか?
不安をなくそうとせず、まず「今、不安が出ている」と気づくところから始めてください。確認行動を少しずつ減らし、一人の時間を安心できるものにしていく。そして、自分の価値を相手に預けないことが、いちばん根っこをほぐすことにつながります。
Q6. どのくらいで、専門家に相談すべきですか?
子どもの場合、年齢を重ねても不安が軽くならない、登園・登校が長期間できない、身体症状が繰り返し出るときは相談を検討してください。大人の場合、暮らしや仕事に支障が出ている、パニック発作が繰り返す、気分の落ち込みが2週間以上続くときは、医療機関に相談してください。
まとめ
分離不安とは、愛着を寄せる相手と離れることに、強い不安を感じる状態です。子どもの分離不安は、多くの場合、正常な発達の一部で、登園しぶりや後追いは愛着が育っているサインでもあります。大人にも起こり、見捨てられ不安や、たびたびの確認行動として出ることがあります。
見極めの目安になるのは、その不安が「過剰かどうか」「生活に支障が出ているかどうか」です。
子どもには、気持ちを受け止め、必ず戻ることを伝え、親自身が落ち着いて構える。大人は、不安をなくそうとせず、確認行動を少しずつ減らし、自分の価値を相手に預けない。すぐには変わりませんが、少しずつ和らげていけます。
ただし、生活に支障が出ている、身体症状が続く、気分の落ち込みが2週間以上続くときは、我慢せず専門家に相談してください。離れる不安を、一人で抱え込まなくて大丈夫です。