「まわりからは順調に見えるはずなのに、自分にはたいした価値がない気がする」
「褒め言葉をもらっても、つい『お世辞では』と受け流してしまう」
「誰かと比べたとたん、理由もなく気持ちが沈む」
こうした感覚を、長いあいだ手放せずにいませんか。
自尊心という言葉は、会話のなかでもよく登場します。それでいて、意味をきちんと言い表せる人はそう多くありません。ある人は「気位が高い」という意味で使い、別の人は「自分を大事にする気持ち」という意味で使う。だから「あなたは自尊心が低い」と指摘されても、どこをどう変えればいいのか見当がつかないのです。
今回の記事では、自尊心が指すもの、自己肯定感やプライドとの違い、低い人に表れやすい傾向とその背景、そして日々のなかで取り戻していく5つの習慣を、順に説明します。まずは「価値を感じられないのは自分の性格だから」という決めつけを、ひとまず横に置くところから始めてみましょう。
自尊心とは?自己肯定感・プライドとの違い
最初に、言葉の意味を整理します。似た言葉が多く、ここで迷う人が少なくありません。
自尊心の意味と、心理学での位置づけ
自尊心とは、自分という存在にはちゃんと価値がある、と感じられる心の土台のことです。
心理学の世界では、自分へ向ける肯定的あるいは否定的な態度としてとらえられてきました。社会学者のローゼンバーグは1965年に自尊感情尺度(Rosenberg Self-Esteem Scale)を考案し、この感覚を10個の質問への回答から数値化できるようにしました。回答を点数化することで、いまの状態をおおまかに把握できます(ローゼンバーグ 1965)。学術の分野では、ふわっとした気分ではなく、数字でとらえられる対象として研究が積み重ねられてきたわけです。
自己肯定感との違いは、じつはくっきりしない
「自尊心と自己肯定感は、何が違うのでしょうか」。しばしば投げかけられる問いですが、その答えはやや拍子抜けするものかもしれません。
両方とも、さかのぼれば英語のself-esteemを日本語にした言葉で、中身はほとんど重なります。ただ「自己肯定感」のほうは、心理学者の高垣忠一郎氏が1990年代に世に広めた表現とされ、あとから定着してきました。ひとつの感覚に複数の訳語が生まれたことが、わかりにくさを生んでいます。
そのうえ「自尊心」には、「気位が高い」「自尊心を踏みにじられた」といった使い方も併存しています。同じ単語を口にしていても、思い浮かべている中身がずれてしまうのは、このためです。
プライドとは、方向がまるで異なる
用語の厳密な境目を追うより、体感に近いかたちで並べてみます。
- 自尊心:他人と比べずとも、自分には価値があると思える内側の土台
- プライド:他人と比べたうえでの、優位性やメンツへのこだわり
この2つは、基準にしているものが逆です。自尊心はあくまで自分の内側をものさしにしますが、プライドは他者との比較をものさしにします。だから、自尊心が弱っている人ほど、プライドで身を守ろうとしがちです。土台が心もとない分、外向きの誇りで穴を埋めようとするのです。
「自信」とも、重なりきらない
自信は、能力への信頼を指します。「これなら自分にできる」という積み重ねから育ちます。いっぽう自尊心のほうは、成否にかかわらず自分には価値があるととらえる感覚です。
そのため、実績を重ねても自尊心が伸びない人がいます。周囲が認めるほどの結果を出しても、心のどこかが満たされない。これは頑張りが足りないせいではありません。自尊心は、成果の量で埋め合わせられる性質のものではないからです。
自尊心が低い人の特徴と、その原因
自分に思い当たる点があるか、眺めてみてください。これは診断ではなく、いまの状態に言葉を当てるための手がかりです。
表れやすい傾向
- 称賛されても真に受けられず、「まぐれだ」「気をつかっているだけだ」と打ち消す
- 他人と比べたとたん反射的に沈み、勝っている面より負けている面ばかりが気になる
- 頼みを断るのが苦手で、断ったら嫌われる・切り捨てられると身構える
- 相手の表情を絶えず観察し、機嫌の悪さまで自分のせいだと感じる
- 満点でなければ意味がないと思い、6割できた自分を認められない
- 何かを決めるのが不安で、判断をつい他人に預けてしまう
- 口ぐせのように謝り、自分がその場にいること自体を後ろめたく感じる
当てはまった数で結論が決まるわけではありません。個数よりも、それがいまのあなたをどれだけ苦しくさせているかが問題です。
自尊心が低くなる主な背景
自尊心の低さには、たいてい理由があります。よくある背景を挙げます。
育ってきた環境の影響 けなされたり比べられたりを繰り返し浴びた人は、その言葉がやがて自分の内なる声にすり替わります。誰かに面と向かって言われたわけでもないのに、「どうせ無理だ」と自分で結論を出してしまう。かつて向けられた評価が、いまも自分の中に住み続けている状態です。こうした背景はアダルトチルドレンという言葉で語られることもあり、アダルトチルドレン(AC)とは?カウンセリングの効果と相談先でも触れています。親との関係に心当たりがあるなら、毒親の悩みはカウンセリングで楽になる?アダルトチルドレンとの関係も読んでみてください。
条件つきでしか認められなかった 「一位を取ったときだけ喜ばれた」「素直に従ったときにかぎって優しくされた」。そんな経験が続くと、結果を出せない自分には値打ちがない、という思い込みが根づいてしまいます。
深く傷ついた出来事があった いじめ、恋の破れ、大きなつまずき、職場での全否定。たった一度きりの経験であっても、自己評価を土台からぐらつかせることがあります。
比較をあおる情報に取り囲まれている SNSを開けば、他人の華やかな成功や幸せそうな日常が絶え間なく目に入ります。比べる気がなくても、視界に入れば頭が勝手に比較を始めます。これは根性の有無とは関係ありません。
心身がただ疲れきっている 眠りが足りない日や働きづめの日が続くと、ものの見方は自然と暗いほうへ寄ります。「自分はだめだ」という実感の一部は、疲れが言わせている可能性があります。
自分への嫌悪が強いと感じる方は、自分が嫌い・自己肯定感が低い原因と克服方法もあわせて読むと、頭の整理に役立ちます。
自尊心が低いままだと、どうなるのか
低いこと自体に良い悪いはありません。ただ、手をつけずにおくと、暮らしのいろいろな場面にしわ寄せが出てきます。
人づきあいが、消耗する時間になる
断れない、顔色をうかがう、荷の重い頼みも引き受ける。これが重なると、人と過ごすこと自体がへとへとになる営みへ変わっていきます。
自分を粗末にする選択を選び続ける
「自分にはこの程度がお似合いだ」と思い込むと、割に合わない環境や、対等でない関係にとどまり続けてしまうことがあります。
動き出す前にあきらめる
「やっても失敗するに決まっている」と先に線を引けば、傷を負わずに済みます。けれど同時に、経験を積むきっかけも見送ることになります。
結果を出しても、満ち足りない
自尊心が低いまま成果を重ねると、「これでもまだ足りない」という思いがつきまといます。前へ進んでも、目標地点のほうが逃げていくような感覚です。
落ち込みが、長く尾を引く
自分を責める思考は、たくさんの気力を吸い取ります。それが続けば、心も体も少しずつ削られていきます。
自尊心を取り戻す5つの習慣
自尊心は、変えようのない性格ではなく、動かせる状態です。だからこそ、毎日の小さな積み重ねで変えていけます。いっぺんに全部やる必要はありません。手をつけられそうなものから始めてみてください。
習慣1|自分の言葉か、誰かから借りた言葉かを見分ける
浮かんでくる否定的なフレーズが、もともと誰の口から出たものかを確かめてみてください。「これは実家で繰り返し聞かされた小言だ」「これは前の職場でずっと言われてきた評価だ」。そう見抜くだけで、その言葉との間に少し隙間ができます。自分の本心だと信じ込んでいたものが、じつは外から入り込んだ声だったと判明することは、めずらしくありません。
習慣2|起きた事実と、自分の受け取り方を分けて書く
たとえば「資料を出したのに上司から何の反応もなかった」という出来事と、「自分の仕事には価値がない」という受け取り方を、ノートの上で分けて書き出します。並べてみると、受け取り方のほうがずっと多いことに気づきます。事実だけを取り出せば、あなたを責める根拠はどこにもない場合がほとんどです。
習慣3|他人に向ける優しさを、自分にも向ける
自尊心が低い人には、他人にはやわらかく接するのに、自分にだけは容赦なく厳しくなる傾向があります。この偏りを見直す考え方として、心理学では自分をいたわるセルフコンパッションが注目されています。もし友人が同じしくじりをしたら、あなたはきっと「そんなに気に病まなくていいよ」と声をかけるはずです。その一言を、そのまま自分に差し出してみてください。
習慣4|「できたこと」を一日ひとつ書き留める
立派な達成でなくてかまいません。予定どおりに起きられた、洗いものを片づけた、返信を一件済ませた。自尊心が低い状態だと、できたことはあっさり忘れ、できなかったことばかりが記憶に居残ります。この書き留めは、その傾きをならすための作業です。
習慣5|比べる材料を、意図的に減らす
SNSに触れる時間を区切る、通知を止める、つい見比べてしまうアカウントを表示から外す。気持ちの力で比較をやめるのは難しいので、目に入るものそのものを整えるほうが確実です。
補足|短い期間で結果が出るものではありません
時間をかけてこびりついたものは、同じくらいの時間をかけて、じわじわとしかほどけません。「数日試したのに何も変わらない」と気を落とす必要はありません。むしろ、そこですぐ落ち込んでしまうこと自体が、いまの自尊心の状態を映すサインでもあります。
一人で抱えきれないときの相談先
自分でできるケアの範囲を超えてしまうこともあります。そんなときは、外の力を頼って構いません。ここでは相談先を整理します。
なぜ、人に話すと変わるのか
自尊心の悩みには、一人で考え込むほど袋小路に入りやすいという性質があります。「自分はだめだ」という見立てを、同じ自分が見直そうとしても、公平な判定にはなりません。採点する側と採点される側が同じ人間だからです。だから、外側からの視点が力を貸してくれます。
長らく自分を責めてきた人にとっては、責めてこない相手と過ごす時間そのものにも効き目があります。何を打ち明けても品定めされないやりとりを重ねるうちに、こわばっていた気持ちがゆるんでいきます。口に出して整理すると、「自分は何をそんなに恐れているのか」「誰の期待を背負おうとしているのか」といった輪郭もはっきりしてきます。
公認心理師という選択肢
心の専門家のなかでも、公認心理師は日本で唯一の心理職の国家資格です。「カウンセラー」という呼び名自体は誰でも使えますが、公認心理師は国家試験に受かった人だけが名乗れます。相談者を責め立てたり急かしたりせず、必要な場面では医療などの支えへつなぐ視点も備えています。
オンラインで相談できるKimochi
「病院に行くほどではないけれど、このもやもやを誰かに聞いてもらいたい」。そんなときの選択肢になるのが、Kimochiというオンラインカウンセリングです。
Kimochiは医療機関にはあたらないため、診断や治療はおこないません。気持ちをほどいて整理する場として、次のような特徴があります。
- 国家資格を持つカウンセラーが在籍:公認心理師が対応します
- スマホ一つで始められる:登録から相談まで、スマホだけで完結します
- 匿名・顔出しなしで相談できる:名前や顔を出さずに話せます
- ビデオとチャットの両方に対応:声を出しづらい状況でも、文字だけでやりとりできます
- 24時間いつでも予約でき、完全オンライン:自宅から、移動の手間なく利用できます
- 3プランから選べる:30分から月4回まで、暮らしに合わせて選べます
医療機関にかかりながら、気持ちを整える場として並行して使うこともできます。同じ話を何度持ち出しても、そのたびにていねいに耳を傾けてもらえます。自尊心のように、自分でもうまく言い表せないテーマこそ、そばで一緒にほどいてくれる相手がいると前に進みやすくなります。
こんなサインが続くときは、医療機関へ
自分と向き合う作業は、思った以上に気力を吸い取ります。次のようなサインが出ているときは、我慢しないでください。
- 気分の落ち込みが2週間以上おさまらない
- 眠れない、あるいは朝に起き上がれない日が続く
- 食欲がなくなる、あるいは食べ過ぎが止まらない
- これまで好きだったことに、まるで気持ちが動かない
- 「いなくなってしまいたい」という思いが頭をかすめる
こうしたサインは、弱さの表れではなく、心が限界に近づいている合図です。心療内科や精神科などの医療機関へ相談することが、回復への足がかりになります。治療が必要な状態かどうかを見きわめられるのは医師だけです。受診したからといって、その場で薬を飲むと決まるわけではありません。まずは相談してみるだけでも十分です。
無料の窓口をまず探したいなら、こころの健康相談統一ダイヤルや、お住まいの地域の保健センターも使えます。仕事の環境が響いている場合は、職場の産業医や社内の相談窓口も頼れます。相談先の選び方に迷う方は、ストレスの相談はどこにするべき?適切な相談先と解決のヒントや、精神的ストレスが限界を超えるサインと解消法もあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1|自尊心とは、どういう意味ですか?
自分という存在には価値がある、と感じられる心の土台のことです。心理学では、自分に向ける肯定的あるいは否定的な態度としてとらえられてきました。ローゼンバーグが1965年に考案した自尊感情尺度によって、数値でおおまかに測れるようになっています。
Q2|自尊心と自己肯定感は、どう違うのですか?
どちらもself-esteemを日本語にした言葉で、中身はほぼ重なります。ただ「自尊心」には「気位」や「メンツ」に近い意味も残っているため、同じ言葉でも受け取り方がずれることがあります。訳語が複数生まれたことが、ややこしさの主な理由です。
Q3|自尊心とプライドは、同じものですか?
分けて考えるほうが実感に合います。自尊心は他人と比べなくても保てる内側の土台で、プライドは他者との比較で生まれる優位性やメンツへのこだわりです。むしろ、自尊心が弱っている人ほどプライドで自分をかばおうとする傾向があります。
Q4|結果を出しても、自信を持てません。
自信は能力を信じる気持ち、自尊心は成否によらず価値があるととらえる感覚です。もとの種類が違うので、実績を重ねても自尊心が伸びるとはかぎりません。頑張りが足りないのではなく、そもそも成果の量で満たせるものではないのです。
Q5|自尊心は、どうやって高めればいいですか?
自分の言葉か借りた言葉かを見分ける、事実と受け取り方を分けて書く、他人へ向ける優しさを自分にも回す、できたことを一日ひとつ書き留める、比べる材料を減らす。こうした習慣が支えになります。ただし、時間をかけて根づいたものはゆっくりとしか変わらないので、あわてないでください。
Q6|カウンセリングで、自尊心について相談してもいいですか?
もちろん大丈夫です。自己評価は、自分だけでは公平に見直せません。採点する側とされる側が同じ人間だからです。だからこそ、外からの視点が助けになります。オンラインなら自宅から24時間いつでも予約でき、匿名で話せるので、「この程度で相談していいのかな」と身構える必要はありません。
まとめ
自尊心とは、自分の存在に価値があると実感できる、心のよりどころのことです。もとをたどれば英語のself-esteemを訳した言葉で、自己肯定感とほぼ同じ中身を指しますが、「自尊心」には気位やメンツに近い意味も混ざるため、つかみどころのない言葉になっています。
自尊心が低いときは、褒められても受け取れず、頼みを断れず、人と比べては沈み、満点でない自分を許せなくなります。その奥には、育ってきた環境、条件つきの承認、深く傷ついた経験、比較をあおる情報、そしてただの疲れが横たわっています。どれも、あなたの性格の欠陥ではありません。
自分の言葉と借りた言葉を見分け、事実と受け取り方を分け、他人への優しさを自分にも向ける。できたことを書き留め、比べる材料を減らす。こうして少しずつ重ねていけば、感覚はゆるやかに変わっていきます。すぐに動かなくても、責めないでください。長い時間をかけてこびりついたものは、それと同じだけの時間をかけて、少しずつ和らいでいきます。
その道のりを、一人きりで抱え込まなくて大丈夫です。話せる場所を持つことも、まぎれもない一歩です。