「タイムラインを開くたびに、周りだけが前に進んでいるように見える」
「同期の昇進、友人の結婚報告、誰かの充実した休日」
見たくないのに、気づけば指が動いて確認してしまう。
そして、確認するたびに気持ちがすり減っていく。
そんな消耗を、繰り返してしまっていませんか。
実のところ、劣等感で気持ちが沈み込むのは、あなたの性格がひねくれているせいでも、心の器が小さいせいでもありません。
いまは、他人の一番いい瞬間が、手のひらの中に絶え間なく流れ込んでくる時代です。
スクロールひとつで、比較の材料がいくらでも手に入ってしまう。
この環境で誰とも比べずにいるほうが、むしろ不自然なのです。
この記事では、次のことをお伝えしていきます。
- 劣等感とは何か、コンプレックスとの違い
- 劣等感が強くなってしまう背景
- 劣等感が強い人にあらわれやすい傾向
- 比べて苦しい気持ちをゆるめる、5つの考え方
- 一人で抱えきれないときの相談先
まずは「こんなことで落ち込む自分は情けない」という決めつけを、いったん脇に置くところから始めましょう。
劣等感とは?コンプレックスとの違い
劣等感とは、他人と比べて自分のほうが下だと受け取る、主観的な感じ方のことです。
この言葉を細かく整理したのが、心理学者アルフレッド・アドラーでした。
劣等性・劣等感・劣等コンプレックスは別物
アドラー心理学では、似た3つの言葉を区別して使います。
- 劣等性:身長や体重など、客観的な基準に照らして実際に低い、という事実そのもの
- 劣等感:その事実を「自分は劣っている」と主観的に受け取ったときに生まれる感じ方
- 劣等コンプレックス:その劣等感を言い訳に使って、向き合うべき課題から逃げてしまう状態
たとえば同じ身長でも、それを短所と受け取る人もいれば、まったく気にしない人もいます。
事実と、その事実をどう感じるかは、切り離して考えられるということです。
(アルフレッド・アドラー著/岸見一郎訳『人生の意味の心理学』アルテ、および岸見一郎・古賀史健『嫌われる勇気』ダイヤモンド社、2013年を参照)
劣等感そのものは、悪者ではない
意外に思われるかもしれませんが、アドラーは劣等感を否定していません。
むしろ、誰もが持つ自然なものであり、成長へ向かう推進力になり得ると捉えていました。
「もっと話せるようになりたい」「もっと伝わる文章を書きたい」と思えるのは、いまの自分との差を感じ取れているからです。
自分は完璧だと思い込んでいたら、努力する理由は生まれません。
差を感じ取る力そのものは、あなたの向上心の裏返しでもあります。
苦しみを生むのは「劣等コンプレックス」のほう
では、何が私たちを苦しめるのでしょうか。
アドラーは、劣等感と劣等コンプレックスをはっきり分けています。
前者はただの感じ方ですが、後者は「◯◯だから、どうせできない」と、劣等感を課題から逃げる口実に使い始めた状態を指します。
言い換えると、劣等感があること自体が問題なのではなく、それを心のどこに置いて見つめるかで、進む向きが変わってくるのです。
目指すのは「なくすこと」ではない
「劣等感を完全に消したい」と願う気持ちは、よくわかります。
けれど、比べる相手がいる限り、差はどうしても目に入ります。
現実的な着地点は、劣等感を抱えたままでも前に進めるようになることです。
ゼロにするのではなく、そこに支配されない状態を目指す、と言い換えられます。
劣等感が強くなる原因
自分を責めるためではなく、仕組みを知るために読み進めてみてください。
比較の材料に、四六時中さらされている
SNSに並ぶのは、多くの人にとっての「見せたい瞬間」です。
昇進、結婚、旅行、うまくいった仕事。
日常の大半を占めるはずの、退屈で地味な時間は、そこには映りません。
つまり私たちは、自分の日常と、他人の切り取られたハイライトを並べていることになります。
これは、はじめから勝ち目のない比べ方です。
否定や比較を、繰り返し浴びてきた
「あなたのお姉ちゃんはできたのにね」
「ちゃんとあの子を見習いなさい」
こうした言葉を浴び続けると、比べるまなざしそのものが自分の中に住み着きます。
誰にも言われていないのに、頭の中で勝手に採点が始まってしまう。
親との関わりに思い当たる節があるなら、毒親の悩みをカウンセリングで楽にする方法もあわせて読んでみてください。
条件つきで認められて育った
うまくいったときだけ褒められる経験が続くと、「自分の価値は成果で買い取るものだ」という思い込みが根づきます。
この思い込みを抱えたまま過ごすと、誰かに後れを取るたびに、自分の価値まで削られる感覚に陥ります。
評価の物差しが、他人の中にしかない
自分がどうありたいかではなく、周囲の目にどう映るかを基準にしてしまう。
このままでは、常に誰かと比べ続けないと、自分の立ち位置すらわからなくなります。
心と体が、単純に消耗している
疲れているとき、思考は自然と悲観のほうへ傾きます。
まったく同じ投稿でも、調子がいいときなら「すごいな」で流せるのに、消耗しているときは「それにひきかえ自分は」と続いてしまいます。
「自分はダメだ」という感覚の一部は、実は睡眠不足や疲労のせいかもしれません。
環境そのものが、比較を強いる作りになっている
同期入社、同じ学年、同じ部署。
条件をそろえて横一列に並べられる場に身を置くと、どうしても差が目に見える形になります。
これはあなたの気質のせいというより、その場の作りが生む問題です。
劣等感が強い人の特徴
自分に当てはまるか、確かめてみてください。
なお、これは診断ではありません。
自分の傾向をつかむ手がかりとして眺めてもらえたらと思います。
他人の成功を、まっすぐ喜べない
祝福したい気持ちと、胸がざわつく気持ちが、同時に湧いてくる。
そして、そんな自分に嫌気がさす。
この二重のしんどさが、いちばん重くのしかかる部分かもしれません。
褒められても、受け取れない
「どうせお世辞だ」「まぐれで通っただけ」と、その場ではねのけてしまう。
せっかくの好意的な言葉が、自分の芯まで染み込んでこない状態です。
SNSを見ては、落ち込む
見ないほうがいいと頭ではわかっていても、つい開いてしまう。
そのたびに、静かに気力を削られていく。
やめられないのは、あなたの意志が弱いからではありません。
挑戦する前に、あきらめる
「どうせ勝てっこない」と先に予防線を張っておけば、確かに傷つかずに済みます。
そのかわり、経験を重ねる入り口も、自分の手で閉じてしまいます。
頑張りすぎて、止まれない
劣等感を打ち消そうと、成果を出し続けようとする。
ところが、いくら積み上げても満たされません。
根っこにあるのが「まだ足りない」という飢えである限り、到達点は遠ざかり続けます。
逆に、自分を大きく見せてしまう
ときには、自慢話や見栄で穴を埋めようとすることもあります。
これは本当の強さではなく、多くの場合、劣等感がかたちを変えたものです。
自己否定が止まらないと感じるなら、自分が嫌い・自己肯定感が低いと感じるときの原因と克服方法も参考になります。
比べて苦しい気持ちを手放す、5つの考え方
すべてを一度にやる必要はありません。
できそうなものから、ひとつずつ試してみてください。
1. 「自分の日常」と「他人のハイライト」を比べていると気づく
SNSに映るのは、その人の人生のごく一部です。
残りの大部分には、迷いや失敗や、なんでもない退屈な時間があります。
けれど、その部分がわざわざ共有されることはありません。
自分の全部と、他人のいいとこ取りを並べている。
その構図に気づくだけで、比較の重みは少し軽くなります。
2. 比べる相手を「昨日の自分」に切り替える
他人との比較には、終わりがありません。
上を見れば、必ずまた誰かがいるからです。
一方で、過去の自分との比較には、ちゃんと着地点があります。
- 先月より、少し早く起きられるようになった
- 去年は知らなかったことを、いまは知っている
- 少し前なら口に出せなかったことを、いまは言葉にできている
小さくてかまいません。
矢印が前を向いていれば、それで十分です。
3. 劣等感を「後ろに置く」感覚を、具体的に身につける
先ほど、劣等感はどこに置くかで働きが変わるとお伝えしました。
ここを、もう少し具体的にほどいていきます。
「目の前に置く」状態とは、劣等感をずっと見つめ続けて、比較と自己否定をぐるぐる回している状態です。
たとえば、こんな思考です。
「同期は昇進した。自分は何の成果もない。だから、自分はダメだ」
ここで思考が止まると、気持ちだけが沈んで、次の一歩が出せなくなります。
「後ろに置く」状態とは、その劣等感を認めたうえで、自分を前に押し出す燃料に変える状態です。
やり方はシンプルで、「自分はダメだ」で文を終わらせず、「だから、どうしたいか」を一文足すだけです。
具体的には、こう変わります。
- 「同期が昇進した。正直うらやましい。→ じゃあ来期、自分は何をひとつ形にしたいだろう」
- 「友人の結婚報告がつらい。→ 自分は本当は、どんな関係を大事にしたいんだろう」
- 「あの人の投稿がまぶしい。→ 自分は本当は、何をやってみたかったんだろう」
ポイントは、「うらやましい」「つらい」という感情を、無理に消さないことです。
感情はそのまま感じたままで大丈夫です。
そこに「で、どうしたい?」という問いをひとつ添えるだけで、劣等感は立ち止まる理由から、動き出すきっかけへと変わっていきます。
4. 比較の材料を、物理的に減らす
意志の力だけで比較をやめるのは、とても難しいことです。
だからこそ、気持ちではなく環境のほうを変えるほうが確実です。
- SNSを見る時間を、あらかじめ決めておく
- 通知を切っておく
- 落ち込む原因になるアカウントは、ミュートする
- アプリをホーム画面から外し、開くまでのひと手間を増やす
根性ではなく、仕組みで解決してあげてください。
5. 「自分の物差し」を、少しずつ育てる
他人の尺度で自分に点数をつけ続ける限り、劣等感がおさまることはありません。
「自分は本当は、何を大事にしたいのか」
この問いに少しずつ答えを出せるようになると、そもそも比べる相手がだんだん減っていきます。
もちろん、すぐに答えが出るものではありません。
今日は何が食べたいか、どこへ行きたいか、何はやりたくないか。
そんな小さな選択から、自分の好みを確かめていくところから始めてみてください。
補足:短い期間では変わりません
長い時間をかけて積み重なった感覚は、それと同じくらいゆっくりとしか動きません。
「一週間やったのに、まだ変わらない」と焦る必要はありません。
その焦り自体が、劣等感の根の深さを映すサインだとも言えます。
自分の気持ちを誰かに言葉にしてみたいと感じたら、安心して話せる場所を探してみるのも、ひとつの選択肢です。
一人で抱えきれないときの相談先
工夫を重ねても、苦しさがなかなか減らないことがあります。
そんなときは、無理に一人で続けなくて大丈夫です。
気持ちを整理したいときは、カウンセリングという選択肢
「病院に行くほどではないけれど、この重さを何とかしたい」
そんなときに合うのが、カウンセリングです。
医療のような診断や治療はしませんが、話すことで気持ちをほどき、心の重さを軽くしていく場になります。
なぜ人に話すと変わるのか、その理由はこの後くわしくお伝えします。
相談先をどう選べばいいか迷っている方は、ストレスの相談はどこにすべきか、誰にも言えない悩みの相談先も読んでみてください。
体調に影響が出ているときは、医療機関へ
次のようなサインが続いているときは、心が限界に近づいているのかもしれません。
- 気分の落ち込みが、2週間以上続いている
- 眠れない、あるいは朝どうしても起きられない日が続く
- 食欲が落ちる、または過食が止まらない
- これまで好きだったことに、まったく気持ちが動かない
- 人に会うこと自体が、つらくなってきた
- 「消えてしまいたい」という考えが、ふと頭をよぎる
これらは弱さのあらわれではなく、心が助けを呼んでいる合図です。
心療内科や精神科といった医療機関を頼ることが、回復へ向かう第一歩になります。
病院にかかったからといって、すぐに薬が始まるわけでもありません。まずは状況を話してみるだけでも構いません。
心と体の限界サインについては、精神的ストレスが限界を超えるサインと解消法でもくわしく紹介しています。
無料で使える公的な窓口
お住まいの地域にある保健センターのほか、こころの健康相談統一ダイヤルでも、費用をかけずに相談できます。
「まだどこを頼ればいいか決まっていない」という段階でも使えます。
職場や学校の窓口
産業医、社内の相談窓口、学生相談室など。
環境が影響している場合は、そこから調整につながることもあります。
職場の人間関係が重くのしかかっているなら、職場の人間関係ストレスで仕事に行きたくないときの解消法もあわせてどうぞ。
なぜ、人に話すと変わるのか
劣等感には、一人で抱えるほど大きくふくらむという性質があります。
自分の物差しは、自分では見えにくい
「なぜ、それを負けだと感じてしまうのか」
この問いは、自分一人ではなかなか立てられません。
長く使い続けてきた判断のものさしは、あまりに身についていて、疑ってみる対象にすら、なかなか上がってきません。
そこに外側からの視点が加わると、ものさしそのものの形がようやく見えてきます。
誰にも言えない気持ちほど、内側にたまる
「友人の幸せを、素直に喜べなかった」
こうした気持ちは、身近な人にはなかなか打ち明けられません。
言えないまま抱え込んでいると、自己嫌悪ばかりが積み重なっていきます。
責められない場所だからこそ、話せる
利害のない第三者であれば、そもそも比較の相手になりません。
評価を下してこない相手だからこそ、気負わずに話すことができます。
心の専門職の中でも、公認心理師は日本で唯一の心理職の国家資格にあたります。
法律にもとづく守秘義務が課されているため、相談した内容が職場や家族に伝わることは、制度として防がれています。
オンラインで「人」に相談できるKimochiという選択肢
「こんな話をするのは、なんだか気恥ずかしい」
そう感じるときに合っているのが、オンラインで相談できるKimochiです。
オンラインカウンセリング「Kimochi」の特徴
- 国家資格を持つカウンセラーのみが在籍
Kimochiには、国家資格『公認心理師』を持つカウンセラーのみが在籍しています。資格や経験を持つ専門家が、気分の重さの背景にある気持ちを丁寧に整理する手伝いをします。
- 完全オンラインで匿名・顔出しなしOK
自宅にいながらビデオ・チャットで相談できるため、人目を気にせず、安心して利用できます。
- ライフスタイルに合わせて選べる3つのプラン
月1回30分の利用から、月4回60分でしっかり相談できるプランまで、自分のペースに合った形を選べます。初月割引もあるため、まずは試してみたいという方にもハードルが低くなっています。
- 24時間予約可能・ビデオもチャットも対応
仕事や家事の合間でも予約しやすく、声を出して話すのが難しいときはチャットでの相談も可能です。
劣等感は、何度おなじ話をしても、その都度きちんと耳を傾けてもらえる相手がいると、少しずつゆるんでいきます。
誰にも言えなかった気持ちほど、責められない場所を必要としています。
もし体調にはっきり影響が出ているときは、医療機関への相談を先に考えてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 劣等感とコンプレックスは、どう違うのですか?
アドラー心理学では、劣等性・劣等感・劣等コンプレックスの3つを分けて考えます。
劣等性は客観的な事実、劣等感はそれを「劣っている」と受け取る主観的な感じ方です。
そして劣等コンプレックスは、その劣等感を言い訳にして課題から逃げる状態を指します。
苦しみを生むのは、劣等感そのものより、その扱い方のほうです。
Q2. 劣等感は、なくしたほうがいいのですか?
なくす必要はありません。
アドラーは、劣等感は誰もが持つもので、それ自体は悪いものではなく、成長の推進力になると捉えました。
「もっとこうなりたい」という思いの裏には、いまの自分との差が必ずあります。
目指すべきは、消すことではなく、振り回されないことです。
Q3. SNSを見ると落ち込みます。どうすればいいですか?
まず、そこに映っているのは他人の人生のごく一部だと知っておいてください。
あなたは、自分の日常と他人のハイライトを並べている状態です。
そのうえで、意志ではなく仕組みで対処するのがおすすめです。
見る時間を決める、通知を切る、落ち込むアカウントをミュートする、アプリをホーム画面から外す。
Q4. 他人の成功を素直に喜べない自分が、嫌になります。
祝いたい気持ちと苦しい気持ちが同時に湧くのは、めずらしいことではありません。
そして、そんな自分を責めることで、二重に消耗してしまいます。
感情そのものは止められないので、責める時間のほうを少し減らしてみてください。
Q5. 比べるのをやめる方法はありますか?
比べる相手を「昨日の自分」に切り替えるのが現実的です。
他人との比較には終わりがありませんが、過去の自分との比較には着地点があります。
先月より少し早く起きられている、以前は言えなかったことが言える。
小さな変化で十分です。
Q6. カウンセリングで、劣等感の相談をしてもいいのですか?
もちろん大丈夫です。
「なぜ、それを負けだと感じるのか」というこの問いは、自分ひとりではなかなか立てられません。
しみついた判断のものさしは当たり前になりすぎて、疑いの対象にすら上がらないためです。
「これくらいで相談していいのかな」と、ためらう必要はありません。
まとめ
劣等感とは、他人と比べて自分が下だと受け取る、主観的な感じ方です。
アドラーは、それ自体は悪いものではなく、成長の推進力になり得ると捉えました。
私たちを苦しめるのは、劣等感そのものではなく、それを目の前に置いて眺め続けてしまう状態のほうです。
そしていまは、SNSによって比較の材料が、常に手のひらにある時代です。
自分の日常と、他人のハイライトを並べて落ち込むのは、あなたがひねくれているからではありません。
比べる相手を昨日の自分に変え、劣等感を後ろに置き、比較の材料を物理的に減らしていく。
そして、少しずつ自分の物差しを育てていく。
すぐには変わりません。
長い時間をかけて積み上がった感覚は、それと同じくらいゆっくりとしか動かないからです。
その歩みを、一人きりで抱える必要はありません。