「気がつけば、一日じゅうその人のことを考えている」 「返信がないだけで、目の前のことに集中できなくなる」 「恋愛以外のことが、どれもどうでもよく思えてしまう」
こうした状態に、自分でも戸惑っていないでしょうか。
頭のなかが恋愛で占領されるのは、意志の弱さでも、だらしなさでもありません。背景には脳の働きがあります。強く心を奪われた相手で頭が満ちてしまうのは、ある面ではごく自然なことだといえます。とはいえ、それが行きすぎると毎日の暮らしが立ち行かなくなり、本人もつらくなってきます。
記事では、恋愛脳とは何か(脳で起きていること)、なりやすい人の傾向、恋愛に呑まれることの困りごと、そして生活を立て直すヒントをまとめました。
恋愛脳とは|意識が恋愛に偏っている状態
恋愛脳とは、恋愛で頭が占められ、考えることも動くことも恋愛を軸に回ってしまう状態を指す呼び名です。医学の診断名ではなく、日々の会話で使われる俗称にあたります。自分の状態をつかむための言葉として、気楽に使ってみてください。
脳のなかで起きていること
深く恋をしているとき、脳内では複数の物質が活発にはたらくとされています。
- ドーパミン:喜びややる気を生む物質。相手を思い描くと、高揚感につながる
- ノルアドレナリン:昂りや張りつめに関わる物質。胸の高鳴りやそわつきのもとになる
- オキシトシン:情の深まりや安らぎに関わる物質。ふたりの結びつきを濃くする
これらがはたらくと、相手のことばかり頭に浮かんだり、会えないとそわそわが止まらなくなったりします。人類学者ヘレン・フィッシャーらの研究では、激しい恋の渦中にある人の脳を調べたところ、報酬に関わる部位が強く反応したと報告されているとされます。恋愛脳とは、脳が普段より強く反応している状態だと捉えられます。
「ごほうび」を追う回路
恋のときめきは、脳にとって大きな快さです。脳は、その快さをもう一度味わおうとします。相手からの連絡や好意が「ごほうび」の役割を果たし、それを求めて意識が相手のほうへ吸い寄せられ続けます。この回路は、依存が生じるときの回路と重なるところがあるとされ、だからこそ「頭では理解していても、断ち切れない」状態が起きます。
脳科学の解説では、恋の初期には冷静な判断を担う部分の動きが弱まるとも言われます。相手の欠点に目が向かなくなったり、大切な約束を後回しにしてしまったりするのは、判断のブレーキが一時的にゆるむからだと説明されています。恋への執着が強まりやすいのも、この回路と無関係ではありません。
一時的なものでもあります
燃え上がった感情が、同じ熱量のまま一生続くわけではありません。時が経つほど、脳の反応はしだいに穏やかになるとされています。今の「頭がいっぱい」の状態が、この先ずっと変わらないわけではない、ということです。
恋愛脳になりやすい人の傾向
診断ではなく、自分の傾向を知る手がかりとして目を通してみてください。
自己肯定感が低い
「自分には価値がない」という感覚があると、その空白を相手からの好意で満たそうとします。好かれることが、自分の価値を裏づける手段になってしまうのです。結果として、相手のちょっとした反応に気持ちが揺さぶられやすくなります。自分を否定する気持ちが強いと感じるなら、自分が嫌い・自己肯定感が低いときの原因と克服方法も参考になります。
見捨てられることへの不安が強い
これまでの経験から「離れられたら終わりだ」という感覚が染みついていると、相手へ強くすがりつきやすくなります。その心細さが、四六時中、意識を相手へ引き寄せます。
恋愛以外の居場所(拠り所)が少ない
仕事、趣味、友人との時間。恋愛以外に打ち込めるものが乏しいと、恋愛がそのまま暮らしの中心になりがちです。心の重みが一点に集まってしまう状態です。
一途で、のめり込みやすい
ひとつの物事に深く入り込む人は、恋愛にも強く傾きます。長所である一方、釣り合いを崩すきっかけにもなります。
自分の気持ちを後回しにしやすい
つねに相手優先で動く人は、自分という軸が育ちにくくなります。やがて、相手がいないと自分を保ちづらくなることがあります。
育ちのなかで受けた影響
幼い時期に安心できる愛着を結びにくかった場合、大人になってからの恋愛で、その満たされなさを埋めようとすることがあります。親との関わりに心当たりがあるなら、アダルトチルドレン(AC)とは?カウンセリングの効果と相談先も参考になります。
恋愛に呑まれると起きる困りごと(デメリット)
恋愛にのめり込むこと自体は、悪いわけではありません。ただ、そこに呑まれてしまうと、いくつかのデメリットが表に出てきます。
まず、毎日の暮らしが立ち行かなくなります。仕事や勉強、家事に身が入らず、相手を思う時間に一日が食いつぶされていきます。連絡が来るか来ないか、そのひとつで気分が大きく上下し、自分の心の調子を相手に預けてしまった状態にもなります。
相手なしでは心が安定しなくなると、その頼りきりが相手の負担にもなり、関係そのものをぎくしゃくさせることがあります。相手だけしか目に入らなくなれば、まわりの声も届かず、どう見ても苦しい関係からも抜け出しにくくなります。相手に合わせ続けるうちに「自分は何がしたいのか」が薄れ、好きだったことも脇へ追いやられていく。恋愛に力を注ぎすぎて友人や家族との関わりが細り、恋が終わったとき近くに支えがいない、という状況にもなりかねません。
生活を立て直すヒント
恋愛感情を消す必要はありません。狙いは、恋愛と暮らしのバランス(つり合い)を取り戻すことです。一度に全部やろうとせず、できそうなものから試してみてください。
恋愛以外の「時間」を先に押さえる
一日のなかに、恋愛を考えない時間帯を意識して差し込んでみてください。仕事に没頭する時間、趣味の時間、体を動かす時間。あらかじめ予定として埋めておくと、意識が自然に散らばります。
「確かめたい」をほんの少し我慢する
何度も連絡を確認したくなったら、まずわずかに間を置いてみてください。「確かめなくても平気だった」という小さな積み重ねが、不安を少しずつゆるめます。
「拠り所」をいくつも持つ
心の重みが一か所に偏っていると、その支えがぐらついたときに一気に崩れます。友人とのつながり、仕事、趣味、学び。頼れる先を何本か確保しておけば、恋愛が揺れても自分を保てるでしょう。
自分の「やりたいこと」を取り戻す
相手優先で過ごすうちに脇へ置いてきた、自分の望み。今日口にしたいもの、足を運びたい場所、挑んでみたいこと。ごく小さなところから、自分らしさを取り戻していってください。
気持ちを書き出す
頭のなかで相手のことがぐるぐる回るときは、いったん外へ出してみてください。「今、何を感じているのか」を書き留めるだけでも、少し距離が取れます。
「自分の価値」を相手に預けない
好かれているかどうかと、あなたの価値は別ものです。相手の反応と自分の価値を切り分けること。これが、おおもとから立て直すことにつながります。
暮らしのリズムを整える
寝不足や不規則な生活は、気持ちを揺らぎやすくします。恋愛に引きずられているとき、その一部は生活の乱れからきているのかもしれません。まずは、眠ることと食べることを大事にしてください。
燃え上がった感情は、脳がフル回転している状態です。意志の力だけで、ぱっと切り替えられるものではありません。急がず、少しずつ整えていけば十分です。
こんなサインが出たら医療機関・公的窓口へ
恋愛によるつらさが、心の不調へ広がることもあります。次のようなサインが出ているときは、我慢しないでください。
- 気持ちの落ち込みが2週間以上続いている
- 眠れない、または朝起き上がれない日が続く
- 食欲が落ちる、または過食が止まらない
- 相手のことで頭がふさがり、生活が成り立たない
- 相手の反応に、気持ちが激しく揺さぶられる
- 「消えてしまいたい」という考えが、ふとよぎる
気の弱さではなく、心がぎりぎりまで張りつめているサインです。心療内科や精神科といった窓口を頼ることが、回復に向かう第一歩になります。心と体の限界サインは、精神的ストレスが限界を超えるサインと解消法でも詳しく紹介しています。
相手からの支配や暴力があるとき
恋愛に夢中なあいだは、苦しい関係のゆがみに気づきにくくなります。次のような状況は、我慢する話ではありません。
- 暴力や暴言を受けている
- 行動や交友関係を、制限・監視される
- 別れ話を切り出すと、脅される
- 望まないことを、無理強いされる
配偶者暴力相談支援センターや、DV相談ナビ(#8008 )、警察の相談専用電話(#9110)が相談先になります。交際相手からの暴力も、これらの窓口が受け止めてくれます。一人で抱えて判断しようとしなくて大丈夫です。※
つらいときの相談先
窓口ひとつで何もかも解決するわけではありません。中身によって使い分けられます。
- 医療機関:寝つけない・食べられない状態や、気持ちの沈みが2週間以上長引くときは、心療内科や精神科へ
- 自治体の相談窓口:各自治体の保健センターのほか、『こころの健康相談統一ダイヤル』でも無料の相談を受け付けています
どこを頼ればよいか迷うなら、ストレスの相談先の選び方と解決のヒントも読んでみてください。
一人で抱えず、人に話すと楽になる理由
恋愛への頼りきりは、一人で抱えるほど根を張っていくことがあります。
恋愛脳の奥には、自己肯定感の低さや、置いていかれることへの不安がひそんでいることがあります。「どうして、相手なしでは不安になるのか」という問いは、自分ひとりでは立てにくいものです。誰かと言葉を交わしながらほどいていくと、その奥にあったものが少しずつ姿を見せます。
恋愛に呑まれていると、見える範囲がぐっとせまくなります。第三者と話すことで、状況を一歩引いたところから眺められるようになります。「この関係は、自分を幸せにしているだろうか」という問いにも、落ち着いて向き合えます。「恋愛に頼りきる自分が恥ずかしい」と口にしても、とがめられることはありません。利害のない相手だからこそ、ありのまま言葉にできます。
「カウンセラー」は資格がなくても名乗れますが、公認心理師(心理職で唯一の国家資格)は国家試験に受かった人だけが名乗れます。あなたを責めたり急かしたりせず、必要なときは医療などの支援にもつなぐ視点を持っています。
「消えてしまいたい」という考えが頭から離れないときは、迷わず次の窓口を頼ってください。
・こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556
・よりそいホットライン:0120-279-338
・厚生労働省「まもろうよ こころ」:https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/
恋愛のとらわれを相談できる|オンラインカウンセリング「Kimochi」
「恋愛のことで頭がいっぱいで、苦しい」 そんなときに頼りやすいのが、オンラインで相談できるKimochiです。Kimochiでは国家資格を持ったカウンセラーが、悩みの整理まで丁寧に寄り添います。
オンラインカウンセリング「Kimochi」の特徴
- ①国家資格を持つカウンセラーのみが在籍
Kimochiには、国家資格『公認心理師』を持つカウンセラーのみが在籍しています。資格や経験を持つ専門家が、気分の重さの背景にある気持ちを丁寧に整理する手伝いをします。
- ②完全オンラインで匿名・顔出しなしOK
自宅にいながらビデオ・チャットで相談できるため、人目を気にせず、安心して利用できます。
- ③ライフスタイルに合わせて選べる3つのプラン
月1回30分の利用から、月4回60分でしっかり相談できるプランまで、自分のペースに合った形を選べます。初月割引もあるため、まずは試してみたいという方にもハードルが低くなっています。
- ④24時間予約可能・ビデオもチャットも対応
仕事や家事の合間でも予約しやすく、声を出して話すのが難しいときはチャットでの相談も可能です。
恋愛のことは、理由をうまく言えないまま話し出しても問題ありません。言葉を探しながら、一緒に少しずつほどいていけます。
もし体調にはっきり影響が出ているときは、医療機関への相談を先に考えてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 恋愛脳とは、どういう意味ですか?
恋愛で頭が占められ、考えることも動くことも恋愛を軸に回ってしまう状態を指す呼び名です。医学の診断名ではなく、日々の会話で使われる俗称です。深く恋をしているとき、脳内でドーパミンなどの物質が活発にはたらくことが関わっているとされています。
Q2. 頭が恋愛でいっぱいになるのは、意志が弱いからですか?
意志の弱さではありません。燃え上がった感情のとき、脳はドーパミンなどによって強く反応しています。このはたらきは依存が生じるときと重なる部分があり、「わかっているのに断ち切れない」状態が起きやすいのです。
Q3. 恋愛脳になりやすいのは、どんな人ですか?
自己肯定感が低い、置いていかれる不安が強い、恋愛以外の拠り所が少ない、一途でのめり込みやすい、自分の気持ちを後回しにしやすい。こうした傾向のある人がなりやすいとされています。育ちのなかで受けた影響が背景にあることもあります。
Q4. 恋愛に夢中になることの、何がデメリットになりますか?
のめり込むこと自体は、悪いことではありません。デメリットとしてあらわれるのは、暮らしが立ち行かなくなる、相手の反応に気持ちが左右される、冷静に判断できなくなる、自分を見失うといった状態です。つり合いが崩れると、自分も相手も苦しくなります。
Q5. どうすれば、つり合いを取り戻せますか?
恋愛以外の時間と拠り所を確保し、確かめる行動を少し我慢し、自分のやりたいことを取り戻す。そして、自分の価値を相手に預けないことが、おおもとからの立て直しにつながります。燃え上がった感情は脳の反応なので、意志だけですぐには変わりません。急がず少しずつで大丈夫です。
Q6. 相手に頼りきってしまうのが、つらいです。
恋愛への頼りきりは、一人で抱えるほど根を張ることがあります。奥に自己肯定感の低さや見捨てられ不安がひそんでいることも多く、自分では気づきにくいものです。誰かと話しながら整理することで、一歩引いた視点を取り戻せることがあります。一人で抱えなくて大丈夫です。
まとめ
恋愛脳とは、恋愛で頭が占められ、考えることも動くことも恋愛を軸に回ってしまう状態です。意志が弱いからではありません。燃え上がった感情のとき、脳はドーパミンなどによって強く反応し、そのはたらきは依存が生じるときと重なる部分があります。だからこそ、「わかっているのに断ち切れない」状態が起きます。
とはいえ、恋愛感情を消す必要はありません。狙いは、恋愛と暮らしのつり合いを取り戻すことです。恋愛以外の時間と拠り所を確保し、確かめる行動を少し我慢し、自分のやりたいことを取り戻す。そして、自分の価値を相手に預けない。燃え上がった感情は脳の反応なので、意志だけですぐには変わりません。急がず、少しずつで大丈夫です。
ただし、相手からの暴力や支配があるときは、我慢する話ではありません。しかるべき窓口を、迷わず頼ってください。恋愛に引きずられるつらさを、一人で抱え込まなくて大丈夫です。
※出典:内閣府 男女共同参画局 https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/dv_navi/index.html