「もう何年も、そういう関係が途絶えたままだ」
「話し合いたいのに、切り出す勇気が湧いてこない」
「このまま、心の距離まで開いてしまうのではと不安になる」
そうした思いを、誰にも打ち明けられずに抱えていませんか。
セックスレスの悩みは、まわりにひどく相談しづらいテーマです。友人にも親にも、そして当の相手にさえ切り出せない。そのために、一人で抱えたまま何年もの時間が流れてしまいます。
ですが、この悩みを抱えている人は決して少なくありません。そして、応じられない側にも、求める側にも、それぞれに事情があります。
今回の記事では、セックスレスの定義と当てはまる夫婦の割合、男女それぞれに挙げられやすい原因、レスになりやすい夫婦との違い、そして解消のきっかけの作り方と相談という選択肢をお伝えします。まずは『こんなことで悩むなんて変だ』という思い込みを、いったん脇へ置くところから始めましょう。
セックスレスの定義と、当てはまる夫婦の割合
はじめに、言葉の意味と広がりを整理します。
日本性科学会による定義
セックスレスという言葉には、専門家による定義があります。日本性科学会は、特別な事情がないのに、二人が納得したうえでの性交やスキンシップ(セクシャル・コンタクト)が1か月以上途絶え、その先も長く続くと見込まれる状態を、セックスレスと位置づけています。この定義は1991年に示され、1994年に見直されたものです。
ここで押さえておきたいのは、期間だけが基準ではないという点です。「二人が納得したうえで」という条件が入っていること、そして「セクシャル・コンタクト」がキスや軽い触れ合いなど、性的な接触全般を指す幅の広い言葉であることです。
どのくらいの夫婦が当てはまるのか
厚生労働省の研究班が監修する健康情報サイトでも、日本の夫婦のおよそ6割がセックスレスの状態にあるとされています。少数派どころの話ではありません。多くの世帯で生じているにもかかわらず、その一つひとつが各家庭のなかで別々に抱え込まれている、という状態です。
定義と、実感にはズレがある
一方で、1か月ないだけで「レスだ」と感じる人はそれほど多くありません。「半年」や「1年以上」を目安に考える人が相当数を占めるという調査もあり、学会の定義と世間の肌感覚には開きがあります。
肝心なのは、空いた期間の長さではありません。そこに、どちらかの『つらさ』があるかどうかです。1か月でも苦しむ人がいる一方で、何年空いても気にならない二人もいます。日数を数えて、自分たちを判定する必要はないのです。
セックスレスの主な原因|男女で挙げられやすい傾向
原因がひとつに決まることは、まずありません。気持ちの面、体の面、二人の間柄、暮らしの節目など、複数の要素がもつれ合って起こります。
男女に共通して挙げられるもの
気持ちの面では、重なるストレスや疲れ、気分の沈み、体型や見た目への引け目などが影響します。間柄の面では、やりとりが減ること、信頼のぐらつき、思いのすれ違い。暮らしの節目としては、出産後の子育てや介護で生活のかたちが変わることが挙げられます。
へとへとに疲れているときは、相手が誰であっても心を開きづらくなります。これは愛情があるかないかではなく、そのときの心身の状態しだいであることも多いのです。
女性側に挙げられやすい背景
体の面では、加齢にともなう変化や、出産後のホルモンバランスの変動が関わります。加えて、子宮内膜症や腟炎などが原因で性交時に痛みが生じている場合もあります。妊娠への不安が先に立つこと、過去のつらい経験が影を落としていることが背景にあるケースもあります。
痛みがあるなら、耐えて続けるようなものではありません。婦人科などの医療機関にかかることで、やわらぐ見込みがあります。奥に体の疾患がひそんでいる場合もあり、原因が判明すれば向き合い方も定まってきます。
男性側に挙げられやすい背景
近ごろは男性側の性欲が下がるケースも増えていて、その一因として「愛情のかたちの変化」が指摘されています。恋人どうしのような関係から、家族や同志に近い間柄へと変わり、性的な対象としては見なくなっていく、という変化です。
これは『愛情が失われた』ということではありません。間柄のありようが、別のかたちへ移り変わっただけです。とはいえ、応じてもらえなかった側は『嫌われた』と感じてしまいがちですが、実際はそうとは限りません。
「一度断ったきり」という積み重ね
きっかけとしてよく挙がるのが、妊娠や出産、長い付き合いのなかでのマンネリ、相手に性的な魅力を感じにくくなったこと、そして「一度誘いを断って、それきりになった」というパターンです。
誘ったほうは傷つき、もう声をかけられなくなる。断ったほうは、次に応じる頃合いをつかめなくなる。どちらにも非はないのに、身動きが取れなくなる構図です。
レスになりやすい夫婦・なりにくい夫婦の違い
同じような環境にあっても、たどる状況は分かれます。その違いはどこから来るのでしょうか。良し悪しを決めるためではなく、自分たちの傾向を見つめる手がかりとして読んでみてください。
なりやすい傾向
- 性的な接触に限らず、触れ合い自体がほぼ消えている(手をつなぐ、寄り添って座るといった接点もない)
- やりとりが用件の伝達だけになっている(それ以外の雑談が交わされない)
- 父・母や同居人としての顔ばかりが前に出ている
- 不満を言わずにため込んでいる(口にしても無駄だと感じている)
- どちらかが慢性的に消耗している(寝不足や働きすぎが続いている)
- その話題に触れること自体を回避している(気まずさから避けている)
なりにくい傾向
- ふだんの触れ合いが生きている(さりげない肌の触れ合いや、視線を交わす会話がある)
- ねぎらいや感謝が声になっている(『ありがとう』が行き交っている)
- 断られても間柄が揺らがない(応じられない日があっても、なじり合わない)
- 口に出せるすき間がある(うまく話し合えなくても、話題にはできる)
- たがいの疲れに気づいている(相手の状態をくもうとしている)
決め手になるのは「触れ合いの総量」
行為があるかないかだけに目を向けると、つい0か100かの発想になります。けれど、定義にある『セクシャル・コンタクト』は、性的な接触全般を含む幅広い言葉でした。大きな一歩をいきなり踏み出すより、なくなった小さなつながりから戻していくほうが、無理がありません。
望まない行為を強要されているなら、それは別の問題
ここまでは、気持ちのすれ違いについて述べてきました。ただ、次のような状況は、まるで性質が違います。
- 拒んでいるのに、行為を無理に迫られる
- 断ると機嫌を損ねたり、なじられたりする
- 応じないことを口実に、生活費を止めるといった仕打ちを受ける
- 恐怖のあまり、断れない状況に追い込まれている
たとえ夫婦であっても、意に反する性的な行為を強いることは許されません。これは二人の間のすれ違いではなく、暴力に該当しうる問題です。相談先としては、配偶者暴力相談支援センターや、警察の相談専用電話にあたる#9110、お住まいの自治体の女性相談窓口といった公的な窓口があります。身の危険が迫っているときは、迷わず連絡してください。すべてを独りで判断しようとしなくて大丈夫です。
解消のきっかけの作り方
関係を一気に変えるのは難しくても、できることはあります。全部をやる必要はありません。取りかかれそうなものから試してみてください。
きっかけ1|「触れ合い」を広く捉え直す
そばに腰を下ろす、肩にそっと手を置く、朝のあいさつを交わす、視線を合わせて話す。性的な関係をいきなり取り戻そうとするより、こんな小さなつながりから始めるほうが楽です。目標を低くすることは、投げ出すこととは別ものです。
きっかけ2|「拒まれた」と決めつけない
相手が応じてくれないとき、多くの人は『自分は必要とされていない』と受け止めます。けれど、単に疲れていた、間が悪かった、体調が思わしくなかった。そんな事情も考えられます。起きた事実と自分の解釈を切り分けるだけでも、傷つき方は違ってきます。
きっかけ3|責める形ではなく、希望として伝える
『なぜ応じてくれないの』という詰め方は、相手を追い込みます。『ときどき抱きしめてもらえると安心する』のように、主語を自分に据えて、願いとして伝えるほうが相手に届きます。
きっかけ4|断り方の「中間」を決めておく
拒む側にとって、もっとも苦しいのは断り方に迷うことです。『きょうは疲れているから、ぎゅっとするだけにしておきたい』。そうしたあいだを取る選択肢があれば、まるごとの拒絶にはなりません。あらかじめ二人で取り決めておくと、断ることへの後ろめたさが軽くなります。
きっかけ5|話し合うタイミングを日常に置く
いざその場で切り出すと、たがいに身構えてしまいます。散歩をしながら、あるいは食事をとりながらなど、張りつめていない場面のほうが口を開きやすくなります。一度で答えを出そうとせず、少しずつ話題にのせるくらいで十分です。夫婦の会話全般に悩みが広がっているなら、夫婦喧嘩が多い原因と対処法・仲直りの方法も参考になります。
きっかけ6|体調や痛みは医療機関に相談する
痛みや違和感を覚えるときは、がまんして続けるものではありません。婦人科や泌尿器科系の医療機関で相談できます。奥に疾患がひそんでいる場合もあり、原因が見えれば対処の向きも定まります。
きっかけ7|まず、自分のコンディションを整える
疲れ果てているうちは、相手が誰であっても心を開けません。眠り、休み、ひとりで過ごすひととき。自分を立て直すことが、間柄を整えるための土台になります。一人の時間が足りないと感じる方は、繊細さんが一人になりたい理由と一人時間のケア方法もあわせてご覧ください。
こんなサインが出ていませんか
セックスレスの悩みを抱え続けると、心にも影響が及ぶことがあります。
- 自分には魅力がないのだと、自分を責め続けている
- 相手のふとした態度に、深く傷つくようになった
- 気分の沈みが抜けず、何をしても晴れない
- 寝つけない、食欲がわかない日が続いている
- 自分が何を感じているのか、つかめなくなってきた
これらは弱さのしるしではなく、心がすり減っている合図です。この状態が2週間より長く続いたり、暮らしに支障が出ていたりするなら、無理をしないでください。心療内科や精神科といった医療機関へ相談することが、回復に向けた一歩になります。
心身の限界サインについては、精神的ストレスが限界を超えるサインと解消法でも紹介しています。自分を責める気持ちが強いと感じる方は、自分が嫌い・自己肯定感が低い原因と克服方法も読んでみてください。
一人で抱えきれないときの相談先
『二人で話し合おうとすると、いつも言い争いになる』『そもそも、この話を持ち出せる雰囲気がない』。そんな手詰まりの感覚が続くなら、第三者に入ってもらうという手があります。
一人でも、始められる
相手が同席しなくても、カウンセリングは利用できます。『相手を変えたい』という動機で始めた場合でも、ふたを開ければ、まず整うのは自分の側であることのほうが多いのです。そのうえ、自分の伝え方や受け止め方が変わるだけで、間柄が動き出すこともよくあります。夫婦関係全体に悩みが広がっているなら、夫婦関係を修復して再構築する方法や、家族・家庭の悩みを相談する方法と解決先も参考になります。
誰にも話せなかったことを、そのまま出せる
『求めてもらえないのが寂しい』『触れられるのがしんどい』。そのどちらを打ち明けても、驚かれることも責められることもありません。利害のからまない第三者が相手だからこそ、気がねなく口にできます。ひとりで考えていると、つらさの正体はぼやけたままです。ほしいのは触れ合いそのものなのか、それとも大事にされている手ごたえなのか。声に出してほぐしていくと、線引きがついてきます。線引きがつけば、伝え方も変わります。
公認心理師という選択肢
心の専門家のなかでも、公認心理師は日本で唯一の心理職の国家資格です。法律にもとづく守秘義務があり、話した内容が外部に漏れることは制度として防がれています。相談者を責めたり急かしたりせず、必要なときには医療などの支えへつなぐ視点も備えています。
オンラインで相談できるKimochi
「こんなこと、誰にも打ち明けられない」。そんなときの選択肢になるのが、Kimochiというオンラインカウンセリングです。
Kimochiは医療機関にはあたらないため、診断や治療はおこないません。痛みや体調の問題がからんでいる場合は、なにより先に医療機関への相談を優先してください。それをふまえたうえで、気持ちを整える場として、次のような特徴があります。
- 国家資格を持つカウンセラーが在籍:公認心理師が対応します
- スマホ一つで始められる:登録から相談まで、スマホだけで完結します
- 匿名・顔出しなしで相談できる:名前や顔を出さずに話せます
- ビデオとチャットの両方に対応:声を出しづらい状況でも、文字だけでやりとりできます
- 24時間いつでも予約でき、完全オンライン:自宅から、時間帯を気にせず相談できます
- 3プランから選べる:30分から月4回まで、暮らしに合わせて選べます
口に出しにくいテーマであればこそ、顔を見せずに相談できることは心強い支えになります。同じ話を何度くり返しても、そのたびにていねいに受け止めてもらえます。
よくある質問(FAQ)
Q1|セックスレスの定義は、どのくらいの期間からですか?
日本性科学会は、これといった事情がないのに、二人が納得したうえでの性交や触れ合い(セクシャル・コンタクト)が1か月以上とだえ、その先も長引くと見込まれる状態をセックスレスとしています。ただ、1か月で『レスだ』と受け止める人は多くなく、定義と実感には隔たりがあります。要は、期間の長短ではなく、どちらかがつらさを感じているかどうかにあります。
Q2|どのくらいの夫婦が、セックスレスなのですか?
厚生労働省の研究班が監修する情報サイトでも、日本の夫婦のおよそ6割と示されています。少数派ではまったくなく、あちこちの世帯で起きている事柄が、各家庭のなかで別々に抱えられている、という実情です。
Q3|主な原因は何ですか?
原因がひとつに定まることはまれで、気持ちの面や体の面、間柄、暮らしの節目など、いくつもの要素がもつれ合います。重なるストレスや疲れ、やりとりの減少、出産後の生活の移り変わり、加齢による変化、さらには体の疾患がひそんでいることもあります。
Q4|拒まれるのは、愛情がなくなったからでしょうか?
そうとは言い切れません。男性側で性欲が下がる背景には『愛情のかたちの移り変わり』が一因に挙げられ、恋人のような関係から、家族や仲間に近い間柄へ移っていくことがあるとされています。愛情がなくなったのではなく、間柄の性質が変わったということです。
Q5|痛みがあって応じられません。どうすればいいですか?
こらえて続けるようなものではありません。子宮内膜症や腟炎にともなう性交痛など、体の疾患がひそんでいることもあります。婦人科などの医療機関にかかることで、やわらぐ見込みがあります。
Q6|一人でもカウンセリングを受けられますか?
はい、相手が同席しなくても利用できます。整うのが自分の側だけでも、伝え方や受け止め方が変わり、間柄が動き出すことは少なくありません。オンラインなら自宅から24時間いつでも予約でき、匿名で話せるので、『この程度で相談していいのか』と身構える必要はありません。
まとめ
セックスレスは、これといった事情がないのに、二人が納得したうえでの性交や触れ合いが1か月以上とだえ、その先も長引くと見込まれる状態を指します。日本の夫婦のおよそ6割が当てはまるとされ、めずらしい話ではありません。
その背景には、重なるストレスや疲れ、やりとりの減少、出産後の変化、加齢、さらには体の疾患まで、いくつもの要素がもつれ合っています。こばむ側にも、求める側にも、それぞれに事情があるのです。
まずは『触れ合い』を広くとらえ直し、拒まれたと早合点せず、責める代わりに願いのかたちで伝えてみてください。あいだを取る断り方を用意し、話す機会をふだんの暮らしに置き、まず自分の調子を整える。痛みや体調の問題があるなら、医療機関に相談を。
そして、意に反する行為を強いられている場合は、がまんでしのぐような話ではありません。公的な窓口を、ためらわずに頼ってください。
誰にも打ち明けにくいテーマだからこそ、どうか一人で抱え込まないであげてください。頼れる相談先を持つことも、関係を立て直すための確かな一歩になります。