「夫が家にいる日は、朝からずっと頭が重い」
「帰ってくる時間が近づくと、なんだか動悸がしてくる」
「夫が出張でいない日は、なぜだか体が軽く感じる」
そういう状態に、思い当たるところはありませんか。
夫がそばにいると、体の調子まで悪くなってしまう。
その感覚を、「気のせいだ」「わがままなだけ」と自分に言い聞かせて、じっと我慢している方は少なくありません。
でも、いちばん近くにいる人との関係が、心と体に影響することは、実際にあることです。
そして、そういう状態を言い表す言葉として、「夫源病」という呼び名があります。
この記事では、次のことをお伝えしていきます。
- 夫源病とは何か、そして医学のなかでの位置づけ
- 主な症状と、セルフチェックの視点
- 体調に影響が出てしまう仕組み
- 今日からできる対処と、相談先
はじめに、ひとつだけお伝えしておきたいことがあります。
きちんと診断ができるのは、医師だけです。
この記事は、あなた自身の状態を整理して、今の状態と向き合うための手がかりとして読んでいただけたらと思います。
夫源病とは?医学のなかでの位置づけ
夫源病とは、夫の言葉や態度、存在そのものがストレスになって、妻の心と体に不調があらわれる状態を指す言葉です。
これは、循環器と心療内科を専門とする医師の石蔵文信氏が名づけた呼び名です。大阪市で開いた更年期外来で、たくさんの夫婦を診るなかで気づき、命名したものだと説明されています(石蔵文信『夫源病 こんなアタシに誰がした』大阪大学出版会などを参照)。
夫の何気ない一言や態度、あるいは夫がそこにいるということ自体が強いストレスになり、自律神経やホルモンのバランスが乱れて、めまい、動悸、頭痛、不眠といった症状としてあらわれる。そういう状態のことを言います。
正式な病名ではありません
まず、ここは知っておいてください。
夫源病は診断名ではないので、病院で「あなたは夫源病ですね」と告げられることは、まずありません。
ただ、診断名がついていないからといって、あなたの不調が軽いという意味には、まったくなりません。
「夫が近くにいると、なぜか体がしんどくなる」という、これまで言葉にしづらかった感覚に、ひとつ名前がついた。そう受け取ってもらえたらと思います。
更年期障害と、間違えられやすい
夫源病の症状は、頭痛、めまい、耳鳴り、動悸や息切れ、血圧の上昇、不眠、気分の浮き沈み、気持ちの落ち込みなど、さまざまです。
年齢に関わらず起こるとされていますが、とくに中高年の時期に多いため、更年期障害だと片づけられてしまうことも少なくありません。
更年期に入ると、それまで心と体を守ってくれていた女性ホルモンが減って、ストレスへの抵抗力が弱まります。いろいろなストレスのなかでも、夫に対するストレスに耐えきれなくなって症状が出てくる場合を、夫源病と考える、という見方です。
つまり、ちょうど更年期と重なる時期に、表に出てきやすいということですね。
「もう歳だから」で片づけてしまわずに、今どんな状況にあるのかもあわせて見ていくことが大切になります。
見分けるヒントになること
見分けの手がかりとして、こんな点が挙げられています。
夫の言動によって症状が重くなったり、逆に夫が出張などでいないときには症状が出なかったりする場合は、その可能性が高いとされています。
また、高血圧や自律神経の乱れ、うつ病などと診断がついても、ふだんの治療ではなかなか良くならない、というときにも、夫源病の可能性が指摘されることがあります。
ここは、この記事のなかでもとくに大事なところかもしれません。
自分の症状が、夫が家にいるかどうかと連動していないか。
そこに気づけるかどうかで、次にどう動けばいいかが変わってきます。
主な症状とセルフチェック
自分の状態を整理するための視点をまとめておきます。
これは診断ではなく、あくまで整理のための視点です。病院に相談するときの手がかりにしてみてください。
体にあらわれやすい症状
- 頭痛、めまい、耳鳴り
- 動悸、息切れ
- 血圧が上がる
- 胃の不快感、腹痛
- 眠れない、途中で目が覚める
- 疲れが抜けず、だるさが続く
心にあらわれやすい症状
- 気分の落ち込み、憂うつな感じ
- 気持ちが不安定になる
- ちょっとしたことでイライラする
- 何をしても楽しいと感じられない
- 夫の顔を見るのがつらい
「いつ悪くなるか」を確かめてみてください
症状そのものより、それがいつ強くなるかのほうが、大きな手がかりになります。
- 夫の帰宅時間が近づくと、症状が出てくる
- 夫が家にいる日は、朝から体調がすぐれない
- 夫が出張や外出でいない日は、症状が軽い
- 週末や連休が近づくと、気持ちが重くなる
- 夫が定年退職してから、不調が始まった
こういう連動があるなら、原因が体の中だけにあるとは限りません。
ため込みやすい人もいます
「我慢強くて弱音を吐かない」「気持ちを表に出すのが得意じゃない」「世間の目が気になる」。こうしたタイプの人は、ストレスをため込みやすいので気をつけたほうがいい、とも言われています。
思い当たるところがある方は、限界のサインに自分で気づくのが、少し遅れやすいかもしれません。
つらいのは、あなただけではありません
ある調査では、既婚女性の9割以上が、夫に何かしらの不満を抱えているという結果も出ています。
その一方で、夫を嫌だと感じてしまう自分を責めて、長いあいだ苦しみ続ける人も多いと言われています。
夫を嫌だと感じてしまう自分を、責めなくて大丈夫です。その気持ちは、あなたが冷たいから湧いてくるわけではありません。
なぜ、体調にまで影響が出るのか
これは気持ちが弱いせいではなくて、体のしくみとして起きていることなんです。
気を張った状態が、ずっと続く
家というのは、本当ならいちばんくつろげる場所のはずです。
その場所で気を張り続けていると、体を休める時間そのものがなくなってしまいます。
いつ機嫌が悪くなるか分からない相手が同じ空間にいると、体は気づかないうちに、ずっと身構えた状態になります。
自律神経のバランスが乱れる
自律神経は、体温や心拍、消化、睡眠など、自分の意思では動かせない働きを調整してくれています。
長いあいだ緊張が続くと、この調整がうまくいかなくなってきます。
頭が痛い、動悸がする、めまいがする、眠れない。そうした症状は、このバランスの乱れとして出てくることがあります。
逃げ場が、ない
職場のストレスなら、家に帰れば少なくとも物理的には離れられます。
でも相手が家庭のなかにいる場合、距離を取れる場所がどこにもありません。
この、逃げ場がないという状況が、消耗をずるずると長引かせてしまいます。
言えないまま、たまっていく
不満を口に出せずに飲み込み続けると、その気持ちは消えてなくならず、たまっていきます。
そして、体の症状というかたちで出てくることがあります。
「言えない」ということ自体が、じわじわ負担になっているんですね。
定年退職が、きっかけになることも
夫が家で過ごす時間が急に増えると、それまで何とか保てていたバランスが崩れてしまいます。
ひとりで過ごす時間がなくなり、毎日のリズムも変わる。そうした環境の変わり目が、症状の引き金になることもあります。
我慢してはいけない状況
ここまでは、夫婦のあいだのすれ違いについてお話ししてきました。
ただ、次のような状況は、それとはまったく別の問題です。
- 殴られる、物を投げられるなど、体への暴力がある
- 暴言や威圧で、日常的に恐怖を感じさせられている
- 生活費を渡さない、外出や交友を制限するといった支配がある
- 望まない性的な行為を、無理やり求められる
これらに当てはまるなら、我慢してやり過ごす話ではありません。まずは、自分の身の安全を守ることを何より優先してください。
頼れる公的な窓口として、配偶者暴力相談支援センター、または警察の相談専用電話(#9110)、お住まいの自治体の女性相談窓口などがあります。
身の危険を感じるときは、ためらわずに連絡してください。すべてを自分だけで判断しようとしなくて大丈夫です。
こんなときは、医療機関へ
つらい症状が続くときは、まずは体の状態をチェックすることが大切です。
受診を考えたい目安
- 頭痛、めまい、動悸などが、繰り返し出る
- 眠れない日が続き、疲れが取れない
- 気分の落ち込みが、2週間以上続いている
- 食欲が落ちる、または過食が止まらない
- 血圧の高い状態が、続いている
- 前は好きだったことにも、気持ちが動かない
どこにかかればいいか
体の症状が目立つなら、はじめの入り口は内科や婦人科になります。
更年期の不調と重なることも多いので、婦人科をたずねる方もたくさんいます。
気分の沈みや眠れなさがつらいときには、心療内科や精神科という選択肢も出てきます。
「検査では異常なし」と言われたら
検査で何も見つからなくても、それは症状がないという意味ではありません。
そんなときこそ、症状と状況の連動を、医師に伝えてみてください。
「夫が家にいる日に、症状が強くなります」。その一言が、診断のヒントになることがあります。
病院にかかったからといって、その場で薬が始まるわけではありません。まずは状況を話してみるだけでも大丈夫です。
心と体の限界サインについては、精神的ストレスが限界を超えるサインと解消法でもくわしく紹介しています。
今日からできる対処
全部を一度にやろうとしなくて大丈夫です。手をつけられそうなものから、ひとつずつ始めてみてください。
1. 症状と状況を、記録する
日付、その日の症状、そして夫が家にいたかどうか。これを2週間ほど、書きとめてみてください。
連動が見えてくれば、それがそのまま、病院で伝えるべき材料になります。
「ただの気のせいかも」という迷いも、書いたものが手元にあると、ぐっと減っていきます。
2. 一人になれる時間を、確保する
同じ空間にずっといると、気が休まりません。
ちょっとした散歩、買い物、習いごと、図書館。ほんの短い時間でも一人になれる時間を、あらかじめ予定として入れてしまってください。
そのことに、罪悪感を持たなくて大丈夫です。
3. 家の外に、居場所を持つ
家庭だけが自分の世界になってしまうと、その空気にのみ込まれやすくなります。
仕事、趣味、地域の活動、友人と会う時間。外の関係に触れていると、「ここだけがすべてじゃない」と思い出せます。
4. 生活のリズムを、少しずらす
食事の時間をずらす、寝室を分ける、動く時間帯を変える。同じ家にいても、顔を合わせる時間を減らすことはできます。
物理的に距離を取ることは、気持ちのうえでの距離をつくる助けにもなります。
5. 期待するのを、いったんお休みする
「分かってほしい」という気持ちが強いほど、それが通じなかったときのがっかりも大きくなります。
相手を変えようとすることと、自分を守ることは、別々に考えて大丈夫です。まずは、自分の消耗を減らすことを優先してください。
6. 伝えるときは、事実とお願いに絞る
「いつもそうじゃない」と、過去のことまでまとめて責めてしまうと、話し合いはなかなか前に進みません。
「さっきのあの言い方が、しんどかった」「食事は自分のペースでとらせてほしい」。起きた事実と、してほしいことに絞ったほうが、相手にも届きやすくなります。
夫へのいらだちが積み重なっているなら、旦那にイライラするのはなぜ?何もしない旦那へのストレスの対処法も参考になります。
7. 気持ちを、外に出す
飲み込み続けた気持ちは、消えずに体のなかにたまっていきます。
ノートに書き出してみる、誰かに話してみる。言葉にすること自体に、気持ちを整理してくれる力があります。
夫婦関係を見直したいときの、相談先
ひとつの窓口で、すべてが片づくわけではありません。悩みの中身によって、使い分けていくことができます。
医療機関
頭が痛い、動悸がする、眠れないといった症状があるなら、まずは内科や婦人科へ。気分の沈みがつらいときには、心療内科や精神科も選べます。
安全に関わることは、専門の窓口へ
暴力や支配があるときは、配偶者暴力相談支援センター(#8008)や、お住まいの自治体の女性相談窓口が対応してくれます。
自治体の相談窓口
お住まいの自治体には、女性相談やこころの健康相談といった窓口が置かれています。お金をかけずに使えるところが多く、「どこに行けばいいのか分からない」という段階でも利用できます。
離婚や法律のことは、弁護士へ
財産分与や年金分割、住まいをどうするか。こうしたことは、専門家にたずねるのがいちばん確実です。
国が運営する法テラス(日本司法支援センター)なら、収入などの条件に当てはまれば、無料の法律相談を使えます。
気持ちのことは、心の専門家へ
「離婚するかどうかはひとまず置いておいて、今のこの苦しさを何とかしたい」。その部分は、医療や法律の窓口だけでは、なかなかカバーしきれないところです。
家族や家庭の悩み全般については、家族・家庭の悩みを相談するには?夫婦・親子・義家族の解決先でも整理しています。
誰にも言えないから、抱え込みやすいテーマです
この悩みが重くなりやすいのには、ちゃんと理由があります。
話せる相手が、いない
友人に話しても「どこの家もそんなものよ」で終わってしまう。子どもに打ち明けるわけにもいかない。実家に話せば、心配をかけたうえに、あれこれ言われてしまう。
行き場をなくした気持ちが、そのままたまっていってしまいます。
「自分が悪いのかも」と思ってしまう
長年連れ添った相手を、嫌だと感じてしまう。そんな自分を、つい責めてしまう。
その自分を嫌う気持ちが、消耗をますます深くしてしまいます。
言葉にすると、輪郭が見えてくる
一人で考えていると、しんどさの正体はぼんやりしたままです。
でも、誰かに話しながらほどいていくと、『自分は何にいちばん参っているのか』『本当は何を変えたいのか』が、だんだんはっきりしてきます。
夫婦の関係そのものはすぐに変えられなくても、自分の受け止め方や背負い方のほうは、変えていけます。その区別がつくだけでも、心の重たさはずいぶん軽くなります。
心の専門職のなかでも、公認心理師は日本で唯一の心理職の国家資格です。法律にもとづく守秘義務があるので、相談した内容が家族に伝わることは、制度としてありません。
夫婦関係そのものを見直したいと考えているなら、夫婦関係を改善して再構築する方法も参考になります。
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オンラインカウンセリング「Kimochi」の特徴
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Kimochiには、国家資格『公認心理師』を持つカウンセラーのみが在籍しています。資格や経験を持つ専門家が、気分の重さの背景にある気持ちを丁寧に整理する手伝いをします。
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- 24時間予約可能・ビデオもチャットも対応
仕事や家事の合間でも予約しやすく、声を出して話すのが難しいときはチャットでの相談も可能です。
ここでは、夫婦だから我慢しなければと、自分のつらさを小さくしなくて大丈夫です。
おなじ話を何度繰り返しても、その都度ていねいに受け止めてもらえます。
もし体調にはっきり影響が出ているときは、医療機関への相談を先に考えてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 夫源病とは、どういう意味の言葉ですか?
夫の言葉や態度、存在そのものがストレスになって、妻の心と体に不調が出てくる状態を表す言葉です。
名づけたのは医師の石蔵文信氏で、正式な医学用語ではありません。
夫の何気ない一言や態度が強いストレスになり、自律神経やホルモンのバランスが乱れて、めまい、動悸、頭痛、不眠などの症状が出てくる、と説明されています。
Q2. 医療機関で、夫源病と診断されますか?
いいえ。正式な病名ではないため、そう診断されることはありません。
ただ、診断名がつかないからといって、不調そのものが軽いわけではありません。
症状に応じて、内科、婦人科、心療内科などで相談することができます。
Q3. 更年期障害とは、どう違うのですか?
症状が似ているので、取り違えられやすいと言われています。
見分ける手がかりとしては、夫の言動で症状が重くなる、逆に夫がいない日は症状が出ない、といった連動が挙げられます。
また、更年期障害の治療を受けても良くならないときに、夫源病の可能性が指摘されることもあります。
Q4. どんな症状が出るのですか?
頭痛、めまい、耳鳴り、動悸や息切れ、血圧の上昇、不眠、気持ちの不安定さ、気分の落ち込みなど、さまざまです。
年齢に関わらず起こるとされますが、とくに中高年で多いと言われています。
症状そのものより、「いつ悪くなるか」を確かめてみてください。
Q5. 夫を嫌だと感じる自分が、嫌になります。
ある調査では、既婚女性の9割以上が、夫に何かしらの不満を持っていると答えたという結果もあります。
その一方で、夫を嫌いになっていく自分を責めて、長く苦しむ人も多いと言われています。
感じていること自体を、責めなくて大丈夫です。
Q6. まず、何から始めればいいですか?
症状と状況を書きとめるところから始めてみてください。
その日の日付、出た症状、そして夫が在宅だったかどうかを2週間ほどつけると、連動が見えてきます。
それがそのまま病院で伝える材料になりますし、「気のせいかも」という迷いも減っていきます。
まとめ
夫源病とは、夫の言葉や態度、存在がストレスになって、妻の心と体に不調があらわれる状態を指す言葉です。
名づけ親は医師の石蔵文信氏で、正式な医学用語というわけではありません。
ただ、診断名がつかないからといって、あなたのしんどさが軽いということには、決してなりません。
頭痛、めまい、動悸、不眠、憂うつな気分。ちょうど更年期障害と間違えられやすい時期に、表に出てきやすいという特徴があります。
見分けの手がかりは、その症状が、夫の在宅と結びついているかどうか、という点です。
はじめの一歩として、症状と状況を2週間ほど書きとめてみてください。
そのうえで、一人になれる時間を確保して、家の外に居場所を持ち、生活のリズムを少しずらす。伝えるときは、事実とお願いに絞る。そして、飲み込んだ気持ちを外に出していく。
体の不調が続くときは、内科や婦人科、あるいは心療内科を頼ってください。
もし暴力や支配があるなら、それは我慢する話ではありません。公的な相談窓口を、ためらわずに頼ってください。
夫を嫌だと感じてしまう自分を、これ以上は責めないであげてください。